ヒューマンセンシングガイド|計測データと研究活用例
HUMAN SENSING SYSTEM
ヒューマンセンシング入門ガイド
視線・動作・生体信号・脳波で何が分かるのか
ヒューマンセンシングでは、視線、身体動作、生体信号、脳波、映像などを取得し、人の行動や反応を多面的に捉えます。本記事では、製品を先に選ぶのではなく、研究で何を明らかにしたいかという視点から、必要なデータと代表的な研究テーマを整理します。
アイトラッカー、モーションキャプチャ、生体信号センサー、EEGデバイスは、それぞれ取得できる情報が異なります。まずは、何を知りたいか → どのデータが必要か → どの環境で計測するかの順に整理することが重要です。
取得したいデータから関連製品を探す
取得したいデータに応じて、対応する計測方法と製品例をご確認いただけます。
ここでは、各製品で取得できる代表的なデータと、その計測に用いられる製品例を簡潔に紹介します。
ヒューマンセンシングとは
ヒューマンセンシングとは、人の行動、身体の動き、生理的な反応、周囲との相互作用を、センサーや映像などを用いてデータとして取得する取り組みです。認知科学、人間工学、HCI、VR/XR、リハビリテーション、スポーツ科学、ロボティクス、教育、作業分析など、幅広い研究・開発分野で活用されています。
アンケートやインタビューでは、被験者自身が認識している感覚や印象を確認できます。
一方、視線、動作、生体信号、脳波などの計測データからは、実際の行動や身体反応を客観的に記録し、主観評価だけでは把握しにくい側面を検討できます。
計測結果を解釈する際の注意: 単一のセンサーだけで人の意図や状態を断定することはできません。研究上の問いに応じて、複数の計測データや主観評価を組み合わせて解釈することが重要です。
ヒューマンセンシングで取得される主なデータ
計測デバイスから選ぶのではなく、研究で必要となるデータの種類から整理すると、適した計測方法を検討しやすくなります。ヒューマンセンシングで扱う主なデータは、次の5つです。
DATA 01
人がどこを見ているか、どの対象をどの程度見ているか、どの順序で情報を確認したかを記録します。
主なデータ:視線位置、注視時間、視線移動、瞳孔径、瞬目、関心領域ごとの注視傾向、シーン映像
DATA 02
身体の姿勢や関節の動き、歩行、腕や手指の動作などを取得し、動作の特徴や条件による違いを分析します。
主なデータ:位置・軌跡、関節角度、姿勢、加速度、角速度、歩行周期、全身・手指動作
DATA 03
心拍、筋活動、皮膚電気活動など、外見からは把握しにくい身体の反応を取得します。
主なデータ:ECG、EMG、EDA/GSR、PPG、呼吸、皮膚温、心拍数、心拍変動
DATA 04
頭皮上の電極からEEG(脳波)を取得し、刺激やタスクに伴う脳活動の時間的な変化を分析します。
主なデータ:Raw EEG、周波数帯域別パワー、事象関連反応、頭部モーション、算出指標
DATA 05
タスク、周囲の環境、操作、発話などを記録し、センサーデータが取得された状況の解釈を補助します。
主なデータ:行動映像、画面録画、音声、操作ログ、外部イベント、タスク開始・終了時刻
IMUについて: IMUは、ECGやEMGのような生体信号そのものではありません。加速度や角速度などの運動学データを取得し、身体活動や生体信号に混入するモーションアーチファクトを確認するために利用されます。
研究テーマ・目的から必要なデータを考える
同じ計測データでも、研究テーマによって役割や組み合わせは異なります。研究で明らかにしたいことを起点に、中心となるデータと、その解釈を補助するデータを整理します。
| 研究テーマ・明らかにしたいこと | 中心となるデータ | あわせて検討するデータ |
|---|---|---|
| UX・HCI評価 どこを、どの順番で見ているか |
視線位置、注視、視線移動 | シーン映像、操作ログ、発話 |
| 動作・技能分析 どのように動いているか |
姿勢、関節角度、加速度、モーション | 映像、EMG、タスク情報 |
| 作業負荷・ストレス評価 身体反応や負荷がどう変化したか |
ECG、PPG、EDA/GSR、呼吸 | 動作、視線、実験条件、主観評価 |
| スポーツ・リハビリテーション どの筋肉を使っているか |
EMG | 関節角度、映像、力・荷重 |
| 認知科学・BCI 刺激やタスク中の脳活動を見たい |
EEG | 視線、操作ログ、生体信号、主観評価 |
| マルチモーダル研究 行動全体を多面的に分析したい |
視線、動作、生体信号、EEG | 映像、音声、操作ログ、実験イベント |
すべてのデータを取得する必要はありません。まず中心となるデータを決め、その解釈に必要な補助データを追加すると、計測機器や解析環境を過不足なく検討しやすくなります。
計測システムを設計する前に整理したいこと
必要なデータを整理したら、計測環境や記録・同期・解析の条件を確認します。次の順番で検討すると、計測システムに必要な機器と構成を整理しやすくなります。
STEP 1
研究で何を明らかにしたいか
STEP 2
どのデータが必要か
STEP 3
どの環境で計測するか
STEP 4
どう記録・同期・解析するか
複数センサーを組み合わせる場合は、デバイス単体の性能だけでなく、タイムスタンプ、サンプリングレート、Raw Data、データ形式、API/SDK、保存方法まで確認する必要があります。
必要なデータと計測条件を整理したあとは、使用するデバイス、収録用PC、同期方法、解析環境を含むシステム全体の構成を検討します。
まとめ
ヒューマンセンシングでは、視線、身体動作、生体信号、脳波、映像・環境情報などを、研究目的に応じて取得します。
重要なのは、最初に製品を選ぶことではありません。研究で明らかにしたいことを確認し、そのために必要なデータ、計測環境、記録・解析方法を順番に検討します。
「何を計測できる製品か」ではなく、「研究上の問いに答えるために、どのデータが必要か」という視点が、計測環境を考える出発点になります。
NEXT GUIDE
研究テーマによっては、視線だけでなく、生体信号や脳波、映像などのデータを組み合わせて利用することがあります。
複数のデータを同じ時間軸で扱うためには、センサー選定だけでなく、データ同期や記録環境、データ形式、解析環境まで含めたシステム設計が必要になります。



